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2022.06.17

商品紹介

ヘビィボディ(高粘度アクリル絵具) の性能検証!

ゴールデンが初めて世に出したアクリル絵具である、ヘビィボディの性能をじっくりと検証してみました。とにかくアクリル絵具というより、油絵具のような絵具という印象があったのですが、実際に油絵具と比較するとどれだけ違うかを試してみました。

同じリンゴのモチーフを、油絵具とヘビィボディで描き比べしてみました。今回は、特に油絵具の特徴が出やすいグリザイユの上に、有色のグレーズで彩色をする技法で比べてみました。アクリル絵具には少々ハードルが高い古典的な技法ですが、どれだけ油絵具に近い美しい透明感と発色が引き出せるでしょうか。

まずは、グリザイユからです。グリザイユ技法とは、モノクロの明暗の階調だけで描いた絵のことで、オールドマスターの絵画は、このモノクロのデッサンの上に、透明な乾性油で溶いた有色の絵具を、まるでセロファンを重ねるようにして描くことで写実的な絵にしていきました。モノクロ写真をカラーにするイメージです。上の写真は、グリザイユで描いたリンゴです。ヘビィボディのグレーは、マンセル表式系の明度(Value)の、11段階の明度に合わせて作られているので、明暗の階調を理論的に構築していくうえでとても分かりやすいです。ホルベインのアクリル絵具も同様に調色されています。

さて、上の絵を1枚描くのに案外時間がかかってしまいました。もう1枚同じ絵を描くには少々時間がないので、なにか方法はないか思案したところ、良いアイデアを思いつきました。

ジェルメディウムを使った転写方法です!モノクロのリンゴをコピー用紙に印刷したものを、コットンキャンバスの裏生地に貼り付けて、乾燥後にコピー用紙を水で擦り取ると、印刷された画像がメディウムとともに布に貼りついて転写されるという技法です。この技法を使って同じモノクロのリンゴをヘビィボディ用と油絵用の2枚用意しました。今回は、ゴールデンのソフトジェルグロスを使いました。ソフトジェルは乾燥後も比較的柔軟性があるメディウムなので、こうした技法に適しています。この技法を使うと、オリジナルのコットンバックとかが作れますね。

まず、プリントしたコピー用紙の印刷面にメディウムを塗布します。

それを布に貼り付けます。生地目にくまなくメディウムが付き、メディウムの厚さが均一になるように、ヘラで良くこすります。あまり力を入れすぎると紙が破れてしまうので注意が必要です。

ある程度メディウムが乾いたら、水につけて紙を柔らかくしてコピー用紙をこすり落とします。紙がむけると印刷されたリンゴが反転して見えてきました。このある程度とは、メディウムが乾きすぎてしまうと水でこすっても紙がむけづらくなるようなので、乾いてはいるけれどちょっと湿っているぐらいが一番上手くいきました。また、水で擦り過ぎても画像自体が剥がれてしまうので、ここも慎重に作業します。

さて、油絵具の画用液の代わりに使えるのが、グレージングリキッドです。このリキットは、アクリル絵具の乾燥を遅くらせ、油絵具で行うようなグレーズ技法をアクリルで行うためのリキッドです。グロスとマットがあります。これを使って描いていきます。

 

このような感じで絵具と混ぜます。アクリル絵具はすぐに乾いてしまうので、油絵具のように描く際の必需品です。

※グレーの絵具の上の乳白色の液体がグレージングリキッドです。

※乾燥を遅らせるメディウムには、もう一つ、リターダーがあります。リターダーは固着成分を含まないため、絵具に配合する際は15%を超えないことを推奨します。

 

さて、いよいよ彩色です。とりあえずグレージングリキッドで薄く溶いた、ベンズイミダゾロンイエロー(透明色)を塗布。グレーズ時のコツは、出来るだけ筆から水は絞って、グレージングリキッドのみで絵具に透明感を与えることです。つい水で絵具を薄くのばしたくなりますが、それでは絵具を希釈しただけになってしまいます。グレーズはグレージングリキッドの樹脂成分で、絵具の透明な被膜を形成することを心がけます。

続いて不透明色のカドミウムレッドライトを比較的厚めに塗布し、より具体的なリンゴの色と量感を表現していきます。絵具が乾いたら、グレージングリキッドを混ぜつつグレーズします。グレージングリキッドの乳白色は、乾くと透明になるのでご安心ください。

 

 

グレージングリキッドを混ぜると、透明な被膜効果がまるで油絵具のようです。

 

 

下の画像は、透明色のキナクリドン クリムソンをグレーズしています。不透明なオレンジ色のカドミウムレッドライト上に、透明なキナクリドン クリムソンをグレーズすることで、美しいリンゴの赤ができてきます。キナクリドン クリムソンのグレーズを重ねていくと明度が下がり、影の表現になります。影の表現は、適宜グレーズの間に黒色の絵具を薄く挟み込んでもよいです。

背景を処理したり、グレーズの間に黄色い部分やハイライトを加えたり、具体的に描き込んでいきます。

出来たのがこちらです。ヘビィボディで油絵風に描きました!

ちなみにこちらの下の画像は、同じモチーフ、同じ描き方で描いた油絵です。

油絵とたいして変わりませんね~。

油絵の透明感はやはりキレイですが、ヘビィボディの仕事の速さと、独特のねっとりした絵具の重厚感は癖になります。

よろしければ、是非お試しください。

絵具が変わると作品も大きく変わりますよ!

 

 

 

 

 

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