2024.05.16
アーティスト紹介
ゴールデン学生サポーター座談会
第1期ゴールデン学生サポーターの武蔵野美術大学の大森恒太さん、松野有莉さん、第2期女子美術大学の浜田優花さん、安藤瑚夏さんの4名にお集まりいただき、座談会とゴールデン製品研究会を開催いたしました。皆さん和気あいあいと様々なお話をされましたが、一部インタビュー形式でお話を伺った内容をご紹介いたします。
(表紙画像は、左から大森恒太さん、松野有莉さん、安藤瑚夏さん、浜田優花さん)
■ゴールデン学生サポーターになって変わったことはありますか?
大森さん:道具に幅が出たというのが大きな変化です。作品として世に出すのが油絵で描いたものという一種のこだわりのような意識がありました。それが良い意味でなくなったといいますか、油絵具とアクリル絵具が持っている「それぞれの強みを生かして制作を行う」という原点に、改めて立ち返った心境です。結果として絵具に触れる機会や使用する画材の幅が増えました。
松野さん:もともと画材に興味を持って探求している方だったのですが、更に探究が加速しました。サポーターになる前からゴールデンのパンパステルに興味はあったのですが、現実的に高価な画材なのでなかなか試す機会がありませんでした。サポーターになって作品に取り入れることができて、自分の中で劇的に表現の幅が広がりました。パンパステルで使用しているスポンジ(sofft)をはじめいろいろな擦り付け具を試してみて、自分に合うものが分かってきました。今の制作においてパンパステルはなくてはならないものとなっています。
また、ゴールデンの画材を使用できた以上に、ホルベインの方たちが画材の相談に答えてくれて、一緒に隣にいて見守ってくれているという感じが一番嬉しいし、力になるなと感じています。
安藤さん:ゴールデンの画材に触れることで、絵画として成立する作品のアイデアが前よりも膨らんでいるのを実感しています。ですが最近は絵画と装置が融合されたものにとても関心があり、そのようなインタラクションアート、鑑賞者が作品に介入出来るような作品をより突き詰めたいと思っています。ただ無機質な装置にはしたくないのでそこには絵画的要素が私の作品には必須だと考えています。サポーターになってから、どうしたら絵画的な要素と装置を融合させられるのかということをよく考えるようになりました。なかなか絵画的要素を自分の中にうまく組み込むことができず苦戦していますが、ゴールデンの画材で実験しつつ、納得のいくような作品を作りたいです。ゴールデンの画材を学校で使っているとき、絵画作品を制作する友人は積みあがっているゴールデンのボトルに興味を持ってくれていて、貸してあげたりもしています。(笑)
浜田さん:一つは、以前よりドローイングへのハードルが低くなりました。絵画を作ろうという意識が強くて、あんまり下描きとかをやらなかったのですが、油絵は匂いの問題から自宅で描くのは難しくて、でもアクリルだと学校から帰って自宅で軽い気持ちで始められて、ドローイングって楽しいなと思うようになりました。もう一つは、油絵で描くと自分の絵が濁りがちというか、古い感じの色彩になってしまうのが気になっていて、ゴールデンのアクリル絵具を使いだしたら、少し作品の色やトーンが明るくなってきた感じがしています。
また、今まで描いていたビニールハウスや水などの透明なものに対する関心が、アクリルメディウムの透明度とつながってきていると感じています。
■アーティストになることについて現時点でどう考えていますか?
大森さん:以前のインタビューにて、アーティストになりたいかという質問があり、その時は作家としての活動と、生活に必要な仕事について考えをお話させていただきました。つまり、曖昧に答えたのですが、改めて作家の活動に専念しようと決意しています。
松野さん:私は以前のインテビューで友達とアトリエを借りながら、バイトとかをしつつ作家活動をしていくかなと答えましたよね。そういう想定でいましたし、最近でも友達とアトリエを探して物件を決めかけたりしたのですが、今の段階では経済的に厳しくて一旦保留にしています。でも実は最近将来について大きく考えが変わりまして。
以前久しぶりにある友人と再会したのですが、友人は美大を出てから就職して、たまに展示活動をしているみたいで。悩みながらも生き生き仕事をする友人の話を聞いていてく内に気がついたのですが、そもそも自分ってバイトとか仕事みたいな事?が結構好きなのですよね。自分の今の活動の感じを振り返ってみても、制作活動も課外活動も、色は違うけれど同じ温度でやっていきたいというか、熱量は本当に100:100って感じなのですよね。それくらい自分にとってはどっちもなくてはならない人生の軸だと思います。だから今は興味のあるうちに会社員生活をしてみたいななんて思っています。
あと私は飽き性なので、仕事を続けていたらそのうち絶対に制作だけしていたいと思う時が来ると思います。これは絶対そうだろうなと確信しています。そういう時にお金があるとやっぱり動きやすいよね、という話を最近ゼミの先輩方としたりして。卒業後しばらくは手の届くところに制作できる環境を置きながら、興味のある業界で働くという生活ができたらなと思っています。
安藤さん:私は、アーティストになりたいと思っています。やっぱり自分で考えてアウトプットするということがずっと好きで、逆に自分はこれしかないと思っています。どこを見ても気になることがあふれていて、自分に落とし込み、作品に置き換えたらどうなるか、自分の作品に期待しているというか、私自身がもっと見てみたいと思っています。アーティストでいると、自分の新境地に出会える瞬間があるので、ずっとアーティストでやっていきたいです。また、アーティストにしかできないこともたくさんあると思っています。この前、宇宙飛行士の山崎直子さんが(女子美術大学)に講演に来てくださったのですが、その時に、アーティストが宇宙に行く需要があることを言ってくださっていて、その時からアーティストの持つ無限の可能性を感じ、これからの未来の自分に希望が持てました。なので、いつかアーティストとして宇宙に行けたら良いなと思っています。また、子供から年配の方まで体感できるようなアートプロジェクトも企画してみたいですし、フィールドワークを通して作品を作ったり、とにかくいろんなことに挑戦したいです。どうやってお金を工面していくかですが、自分が興味のある分野でインスピレーションを受けられるような職場で働きながら、作品を作っていきたいと思います。最近、思い切ってずっとやってみたかった科学館でのアルバイトを始めました。始めてから、地球環境のことについて考える機会が増え、今まで作品を作る過程で環境破壊につながるような制作の仕方をしていなかったと自分を見つめ直すきっかけになりました。こんな感じで個人的な興味や気づきに敏感になり、素直にやっていきたいです。
浜田さん:作家になるということがどういうことなのかということがまず、分からないというか、作家活動だけしていれば作家なのか、別に就職しても作家じゃないわけじゃないと思うし、しばらく辞める期間があってもまた制作したら作家なのではないかなとも思うし、世の中に認められる必要、評価が必要か、お金になるかならないかという基準とか、いろんな定規がある中で、制作していくことって結構きついなと思う時が多くて、でも、私としてはずっと制作していきたいなとは思っています。制作していないとメンタルが不安定になるというか、自分のエネルギーの出し方の一つになってしまっているのです。絵を描くということが。最近気持ちが沈んで、上手くいかないなと思っていると、あまり制作できてないと気付くことが多いです。だから続けていく必要があるのだなと思っています。大学院に行って、だんだん自分が年を取ると続けることが難しい、結構やめちゃう人がいっぱいいるから、とにかく続けるだけでも意味があるのかなと最近は思います。私が大学院に入ろうと思ったのも、卒制の段階で自分の作品が見えてきて、もうちょっとやったらこれどうなるのかな、というのが気になったから、もう少し続けようと思って大学院に行ったのですけど、やはり、自分がどういう作品を作るかを楽しみにしているじゃないけど、どこまでいけるのかどうか、世間的に売れるとか評価される絵が描けるかどうかはわからないけど、自分の中で結論(研究)がまとまって、成果物が出るのが楽しみでもあり、とにかく制作は続けたいなと思っています。
■制作をするうえで困っていることなどありますか?
松野さん:パステルの定着について完璧に解決できてはいないですね。パネルに布を袋張りにして、布に直接描いているのですが、どうしても定着スプレーをかけると色が暗くなってしまうし。油絵とかを見るとあらゆる面でいいなあと思いつつ、でも結局パステルを使っている方がまだ性に合っているなと思っています。
浜田さん:画材というか、制作するうえでの悩みは常にありますね(笑)
安藤さん:最近は、自分が生み出す作品の中にどれだけ当事者性が必要なのか、もしくは必要ないのかを今はずっと考えていますね。当事者性がないと説得力がないというか、深みがないというか。自分はまだ自分の中でしか完結して作品にしていないなというか。これからどうなっていくのかなって、ずっと悩んでいます。
松野さん:それで言ったら、私も自己完結型ですね。自分が感じたこととか、散歩して見た風景などを作品にしているというか。色々なタイプの方がいらっしゃると思うのですけれど。
大森さん:私の場合もかなり自己完結型かなと。制作を始めるにあたって、とりあえずネットニュースを見る派です。ネットを見て興味深いニュースが出てきたら、それをもとに連想し作品にしよう、というところがあるので、むしろ当事者とはかなりかけ離れた場所で、別の方向に道を引いて、それに向かって作品を作っている。
浜田さん:そっちの方が現代の実際にいる人間という感じがしますね。
松野さん:それ初めて聞いた。そうだったの(笑)。
大森さん:卓上で世界を揺るがすニュースが起きていたら面白いな、という気持ちで制作をしています。
余談ですが制作に行き詰まったときに使う、良い方法があるのですよ。
オフレコの話ですが・・・
記事にはできないオフレコのお話など、色々な話で盛り上がった後、ゴールデンアクリリックスのハイフローを使ってエアブラシ研究を行い閉会といたしました。
皆さんこうした交流会は新鮮であったようで、とても楽しんで頂けました。これからもゴールデンアクリリックスをきっかけに、こうしたアーティストの集まりを企画できたらと考えております。
それでは、また次回。